落体運動の最難関[斜方投射]の解き方!
地上のある点から、小球を水平方向と角度 θ をなす向きに大きさ \(v_0\) [m/s]の初速度で投げる。重力加速度の大きさは g[m/\(s^2\)] とする。必要であれば 2sinθcosθ = sin2θ を用いよ。
(1)最高点に達するまでの時間 \(t_1\) とその高さ h [m]を求めよ。 (2)落下点に達するまでの時間 \(t_2\) [s]と水平到達距離 l [m] を求めよ。 (3)初速度の大きさを変えずに、角度 θ を変えて投げるとき、 小球を最も遠くまで投げるための角度 \(θ_0\) を求めよ。 |
この問題は、平面運動関連では一番難しい「斜方投射」の問題です。
ただ、問題自体は非常に基本的です。
なのでこの問題ができれば、「落体の運動の基礎は理解できている」と言っていいでしょう!
また、今まで問題とは少し違う点がありますので下のポイントを見てから進むと良いかも?
Index
ポイント
今までの問題と違う点があります。
それは、速度など必要な数字が全て、「文字」になっているということです。
「g」は「g」のままであって、g = 9.8 のような具体的な数字が出てきません。
でも! 私はこっちの方が簡単だと思います。なぜかというと…
数字の計算が無い分、「計算ミスが減る」からです。
また、速度の分解が本格的に必要になるので、注意して挑みましょう。
(1)最高点に達するまでの時間 \(t_1\) とその高さ h [m]を求めよ。
解説図
解き方のコツ
まず、前回の水平投射とおんなじで、斜方投射でも「水平方向」と「垂直方向」を分けて考えなければいけません。
前回を見てない人はこちら↓
でも、上の解説図を見てください。気付きましたか?
この斜方投射では、斜め方向に「\(v_0\)」で飛ばしたと言っています。
なので、「水平方向にどれだけの速さで進むのか?」
はたまた、「垂直方向にどれだけの速さで進むのか?」
それがわかりません。困りました。
でも、打つ手はあります。
それは、斜めの速度を「縦」「横」に分解すれば良いのです。
つまり、ベクトルの分解です。
今回の場合は、角度がθとなっているため、三角関数を使わにゃいかんです。
分解してみると…
ということは、
水平方向は「初速度 \(v_0cosθ\) の等速直線運動」
垂直方向は「初速度 \(v_0sinθ\) の鉛直投げ上げ」
このつもりで問題を解いていきましょう。
計算の手順
この問いで求めたいのは、垂直方向の値である「t」と「h」です。
なので、水平方向は無視です!
「x」?「l」? 知ったこっちゃありません!!
まずは「t」を求めましょう。
「t」を含む公式は3公式のうちの1つ目と2つ目ですが、2つ目は使えません。
なぜかというと、最高点の時の「y」の値がわからないからです。
公式のうち、わからない変数が2つ以上ある時点でお手上げです。
なので使うのは、1つ目にしましょう。
「え?こっちも『v』の値がわからないじゃないか?」と思った人がいると思います。
でも大丈夫。「v」の値は分かっています。
それは…「v = 0」です。
「鉛直投げ上げ」の時に取り上げましたが、
小球はどんどん上に上がっていき、最高点で下向きに変わっています。
つまり小球の速度は、正の数からどんどん0に近づいて、負の数に変わっています。
では、いつ0になったか? その点こそ、最高点だというわけです。
また、鉛直投げ上げでは上向きを正の方向としていますが、
重力は下向きなので「g」は「-g」に置き換えましょう。
「\(v = v_0 + gt\)」 において、
v = 0 であり、 初速度\(v_0 は v_0sinθ\) に置き換えると $$ 0 = v_0sinθ – gt_1$$ $$ gt_1 = v_0sinθ$$ $$ t_1 = \frac{v_0sinθ}{g}$$ よって解は、\(\frac{v_0sinθ}{g} [s]\) |
答えに「\(v_0\)」が入ってることに、違和感があるかもしれませんが、
これでOKです。「θ」が入っているのと同じように、
問題文で与えられた「\(v_0\)」もOKなのです。
次は、「h」を求めましょう。
「h」は小球が上昇した「y」の値と同じです。
なので「y」を求めていきます。
「y」を求めるためには、3公式のうち2番目と3番目の両方が使えます。
しか〜し!2番目を使ってしまうのはやや危険です。(答えは出せますが…)
だって2番目は\(t^2\)があります。
さっきの答えを使って「\( t^2 = {\frac{v_0}{g}}^2\)」というのはあまりやりたく無いです。
なので3番目を使います。
「\(v^2 – {v_0}^2 = -2gy\) 」において、
v = 0 であり、\(v_0 を v_0sinθ\) に、yをhにおきかえて置き換えて、 $$0^2 – {v_0sinθ}^2 = -2gh$$$$-{v_0}^2{\sin θ}^2 = -2gh$$$$h = \frac{{v_0}^2{\sin θ}^2 }{2g}$$ よって解は、\(h = \frac{{v_0}^2{\sin θ}^2 }{2g} [m]\) |
(2)落下点に達するまでの時間 \(t_2\) [s]と水平到達距離 l [m] を求めよ。
解説図
解き方のコツ
この問題は基本的に(1)と同じ方法で解けます。
ただこちらは等速直線運動なのでもっと簡単です。
最初に「t」を求めます。
この問題の王道としては、まず「y = 0」になる時の「t」を公式を使って求めます。
でもそんな計算は必要ありません。コツがあるのです。
計算の手順
(1)で小球が最高点に達する時の「t」は「\(t_1 = \frac{v_0sinθ}{g} [s]\)」だとわかりました。
つまり、「\(t_1\)」秒かけて、てっぺんまで行ったわけです。
ということは、また「\(t_1\)」秒かけて、下まで落ちてくるはずです。
これを利用すると、小球が落下する時の「\(t_2\) 」の値は「\(t_1\) +\(t_1\)」になります。
このコツを使うことで、公式を使わなくてよくなります。
\(t_2 = 2 × t_1\) なので(1)の解を代入して $$t_2 = 2 × t_1 = \frac{2v_0sinθ}{g}$$ よって解は、\(\frac{2v_0sinθ}{g} [s]\) |
「l」の値は、はじきの法則を使って
\(l = (速さ) × (時間) = v_0cosθ × t_2\) より、 $$l = v_0cosθ × \frac{2v_0sinθ}{g}$$ $$ = \frac{2{v_0}^2sinθcosθ}{g}$$ 問題文における、「2sinθcosθ = sin2θ」を用いて、 $$l = \frac{{v_0}^2sin2θ}{g}$$ よって解は、\(\frac{{v_0}^2sin2θ}{g} [m]\) |
(3)小球を最も遠くまで投げるための角度 \(θ_0\) を求めよ。
解き方のコツ
「遠くまで投げる」というのは「l」を極力大きい値にすることと同じ意味です。
落下地点までの距離が長ければ長いほど、遠くまで飛んだことになりますからね(-_-)/
では(2)で求めた、「l」の値はなんだったでしょうか?
はいっ、\(l = \frac{{v_0}^2sin2θ}{g}\) ですね。
問題文には、初速度の大きさを変えずに「θ」の値だけ変えてねと書いてあります。
ということは、「\({v_0}^2\)」と「g」はもういじることはできません。
じゃあ、「l」を極力大きくするには、「sin2θ」を極力大きくしてあげるしかありません。
ではどんな「θ」なら「sin2θ」は最大になるのでしょう?
分かった方はいますでしょうか?
そうです!そもそも「sin~~」は0以上1以下になることがわかっています。
当然、「sin2θ」は「θ」をどれだけ大きくしても「1」を超えることはありません。
なので今回は、その中でも一番大きい「sin2θ = 1」となるような「θ」を探してみましょう。
計算の手順
「sin2θ = 1」となるような「θ」が、求める「\(θ_0\)」なので、
\(sin2θ_0 = 1\) より、sin関数が1となるとき角度は90度であるので、
\(2θ_0 = 90\) よって解は、\(θ_0 = 45°\) |